羽毛布団は、少しワインに似ています。以前もそのように書かせていただきました。
中に入っている羽毛が実際にどんなものなのか。見た目ではほとんど分かりません。
それでも価格は、数万円のものから何十万円するものまであります。
表参道布団店では今、すべての羽毛布団を注文をいただいてから一枚ずつ作っています。
私たちは、これを「バイオーダー」と呼んでいます。
なぜわざわざそうしているのか。
もちろん羽毛そのものの品質は大切です。ダウンパワー、産地、グースなのかマザーグースなのか。
ただ、長く羽毛布団を見てきてそれだけではないと思うようになりました。
私がもう一つ大切にしているのは羽毛の「鮮度」です。
正式な品質基準に「鮮度」という項目があるわけではありませんが、私はそう考えております。
羽毛の一粒はダウンボールと呼ばれる小さな球のような形をしています。この球がふんわりと開くことで、羽毛は軽く、暖かくふくらみます。
ところが羽毛は湿気にとても弱い素材です。
湿度の高い環境に長く置かれると、ダウンボールは少しずつ湿気を含み、開きが鈍っていきます。膨らむ力<ダウンパワー>そのものが、静かに落ちていきます。
ヨーロッパの乾いた土地で育った羽毛にとって、日本の湿度は決してやさしい環境ではありません。
だからこそ私たちは完成した羽毛布団を何年も在庫として置きたくないのです。

(写真)白州で洗浄した新鮮な羽毛を、1ベール(約60kg)ずつパックし、保管しています。
実際、25年この業界にいると長いあいだ在庫として残っている羽毛布団を何度も見ることもありました。
側生地も同じ、品質表示も同じ、ただ、いつ作られたものなのかはお客様にはなかなか分かりません。
従って、表参道布団店では先に作って並べておくことはしません。
側生地の縫製までを、あらかじめ用意しておく。そして注文をいただいてから、その時に用意している新しい羽毛を吹き込み、最後の仕上げをします。
効率だけを考えれば、完成品をまとめて作って在庫しておくほうが楽なのかもしれません。
それでも、やっぱりそれはしたくないのです。
せっかく良い羽毛を使うのなら、できるだけ良い状態で、お客様に届けたい。
とても単純ですが、それが、私たちがバイオーダーで作り続けている理由です。


