2021年の11月、私はデンマークにいきました。

コペンハーゲン。イタリアを回ったあと、たった一泊二日の、短い滞在でした。けれど、もし私の人生で一番思い出に残っている日を挙げるとしたら、私はこの日を挙げると思います。

案内してくれたのは、友人であり、デンマークのキャンプメーカー「Nordisk」の日本代表を務める鷲崎さん。当時、私たちは彼らとの共同商品を出そうとしていてその打ち合わせも兼ねた出張でした。

ただ、この一日で私が受け取ったものは打ち合わせという言葉ではとても収まりません。今振り返っても、あの一日が私のものづくりの原点を変えたと感じています。

朝、はじめに向かったのは、カールハンセン&サン。デンマークを代表する家具ブランドの本社であり工房です。

そこで私は彼らのものづくりを端から端まで見せてもらいました。そして、あの世界的に有名なYチェア(CH24)を、自分の手で編ませてもらいました。細い紐を一目ずつフレームに掛けていく。すべて手作業で一台一台、丁寧に編んでいく。

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驚いたのは彼らのものづくりが最初の一歩から「サステナブル」に基づいて貫かれていたことです。企業としてものを作る以上、地球環境に負荷をかけないのは当たり前。その上で、作っている職人を最大限に敬う。その配慮が木の選び方から、削り、端材の処理まですべてに行き渡っていました。

デザインに目が行きがちです。けれど彼らの思想は、見た目など後回しでした。何より、自分たちのものづくりは完璧にサステナブルでなければならない——その思想が、言葉にされずとも勝手に伝わってきました。

ただ見た目が美しいから続くのではない。本物のデザインというのは、最初の工程の、その一歩目から、こういう考えで始まっている。私はそう強く感じました。

家具の世界で私は一度、自分のものづくりを問い直されました。

けれど、その日に問い直されたのは家具のことだけではありませんでした。夜には食が、そして翌る日にはファッションが、同じ問いを私に突きつけてきます。その話は、次に譲ります。

帰りの飛行機で、私はずっと考えていました。

「羽毛布団しか知らない私に、何ができるだろう。」

その問いが日本に帰ってからも頭から離れませんでした。

── #5「本物の料理に、物差しを壊された。」へ続く