2021年、デンマークを訪れました。以前にも書いたとおり、現地でさまざまなものづくりに触れ、帰国してから、自分には何ができるのだろうと本当にいろいろ考えたのを覚えています。

当時のヨーロッパでは、すでにリサイクル羽毛が広く使われていました。サステナブルやエシカルという考え方が、ものづくりに自然と取り入れられている。訪れたカール・ハンセン&サンでも、その姿勢が強く印象に残りました。一方で日本では、そうした考え方がまだ広く浸透しているとは言えなかったように思います。

それまで私は「本当に良い羽毛布団を、透明性のある価格で届けたい」という思いで表参道布団店を続けてきました。その考えは今も変わりません。ただ、これから先も羽毛布団を作り続けるなら、リサイクルやサステナビリティにもきちんと向き合わなければならない。そう考えながら、日本に戻りました。

当時、リサイクル羽毛を扱える工場はヨーロッパでも限られていました。使用済みの羽毛を大量に集め、選別し、洗浄して再び使える状態に戻すには、それだけの設備と規模が必要だったからです。私たちのような小さなメーカーが簡単に取り組める分野ではありません。

そこで、イタリアへ向かいました。訪ねたのは、世界的なアパレルブランドにも羽毛を供給している大手メーカーです。

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それまで私は、日本の羽毛布団の世界しか知りませんでした。羽毛の文化や技術の中心はヨーロッパにあると、ずっと思っていました。そんな大手メーカーのリサイクル羽毛なら、品質も間違いないはずだと。現地の社長と直接話し、その場で約300万円分の羽毛を契約しました。品質を疑う気持ちは、ほとんどありませんでした。

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ところが、日本に戻ってサンプルを作ってみると、思っていたものとは随分違いました。普段使っている羽毛と比べて、どうしても品質に差を感じる。念のため、いつもお願いしている日本の検査機関で調べてもらうと、現地で示されていた数値を大きく下回る結果でした。

有名なメーカーで、ハイブランドにも羽毛を供給している。それだけで品質を信用していたのだと思います。もちろん、この一件だけでヨーロッパ全体の品質を判断することはできません。ただ、この経験で改めて感じたことがあります。日本のものづくりは、本当に細かいところまで品質を求められる。私たちにとって当たり前の基準が、必ずしも世界共通ではないということです。長年日本で羽毛布団を作ってきた私にとって、これは大きな発見でした。

そして、もう一つ。サステナブルであることは、もちろん大切です。でも、それを理由に品質を妥協することは、私にはできませんでした。結局、イタリアから仕入れた羽毛を、表参道布団店の羽毛布団として販売するのは見送りました。

とはいえ、その羽毛を捨てたわけではありません。多くは当時販売していたダウンピローに使いました。枕なら、羽毛布団ほどの保温性やかさ高性は求めません。用途が違えば、羽毛に必要な性能も変わります。一部は、当時共同商品を検討していたNordiskのキャンプ用品のサンプルにも使いました。

それでも、羽毛のリサイクルに取り組みたい気持ちは変わりませんでした。

調べてみると、リサイクル羽毛そのものは日本にも昔からありました。ただ、以前は意味合いが少し違います。たとえばビジネスホテルで大量の羽毛布団を用意するとき、新しい羽毛ではコストが高くつく。そこで価格を抑えるために再生羽毛を使う。私が知っていたリサイクル羽毛は、そういうものでした。それがヨーロッパでは、サステナビリティという観点から改めて価値を持ちはじめていた。

日本でも、使わなくなった羽毛布団を回収して再生する取り組みが、少しずつ広がっていました。ただ、ひとつ気になることがありました。回収される羽毛の品質です。お客様が自分の羽毛布団のグレードを正確に把握しているとは限りません。さまざまな品質のものが集まるなかで、一枚ずつ中身を確認して選別するのは、大変な手間がかかります。

私が作りたかったのは、ただリサイクルされた羽毛布団ではありません。リサイクルでも、表参道布団店として納得できる品質の羽毛布団でした。

そこで思い浮かんだのが、長年お世話になっている白州の洗浄工場です。私たちは以前から、古くなった羽毛布団を洗い直し、新しい生地で仕立て直すリフォームを続けてきました。良質な羽毛なら、長年使われたものでも、きちんと洗浄すれば再び使える状態に戻ります。

白州の担当者に相談しました。「どんなに古くても構いません。良い羽毛だけを選んで、私たちのために取っておいてもらえませんか」。条件は、グースであること。ダウン率90%以上、ダウンパワー400以上の高品質な羽毛であること。そうした羽毛だけを選別し、確保してもらうことにしました。

長年リフォームを続けるなかで、良質な羽毛が洗浄によって再び使える状態に戻ることは、何度も見てきました。だからこそ、最初から品質の良い羽毛だけを選び、いつものリフォームと同じ工程で洗えば、新しい羽毛に劣らないものが作れるはずだと考えたのです。

工場では以前から羽毛の再生を行っていましたが、これほど高い基準を設け、特定の羽毛だけを選別して確保するのは初めてのことでした。

もちろん、簡単ではありません。20年、30年と羽毛を扱ってきた職人が、品質表示に頼らず一枚ずつ中身を確かめる。解体し、羽毛を取り出し、選別して、白州で丁寧に洗う。手間も時間もかかり、大量には作れません。それでも、この方法でやりたいと思いました。

リサイクルだから安い、ではなく、リサイクルでも良いものを作る。こうして生まれたのが、表参道布団店のClean Cycle Downです。

この取り組みも、今年で5年目です。始めた頃に比べ、選別や洗浄の精度は上がり、品質も着実に良くなっていると感じます。今も職人の手作業に頼る部分が多く、年間に作れる数には限りがあります。それでも、続けてきたぶん、少しずつ積み重なってきたものがある。高品質な再生羽毛への関心も、以前より高まっているように感じます。

2021年、デンマークから戻ったとき、自分には何ができるのだろうと考えていました。Clean Cycle Downは、私たちなりに出した、その答えのひとつです。

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