リサイクルダウンとは、使用済みの羽毛製品から回収した羽毛を、洗浄・選別して再び使えるようにしたものです。「再生羽毛」とも呼ばれます。
「中古の羽毛」と聞くと抵抗を感じるかもしれませんが、適切に洗浄されたリサイクルダウンは、新品の羽毛と機能的な差がほとんどありません。理由は、羽毛が劣化する主因が「汚れ」であり、洗浄によってそれを取り除けるからです。
この記事では、リサイクルダウンの製造工程、新品との違い、選ぶときの基準を専門店の立場から解説します。
この記事でわかること
- リサイクルダウンがどう作られるか
- 新品の羽毛と比べて何が同じで、何が違うのか
- 品質の見分け方(選ぶときの基準)
- なぜ羽毛は再生できるのか
リサイクルダウンとは
リサイクルダウンは、次のような経路で回収された羽毛を原料としています。
これらを解体し、羽毛だけを取り出して洗浄・乾燥・除塵し、品質ごとに選別したものが、リサイクルダウンとして流通します。
なぜ羽毛は再生できるのか
羽毛が再生可能な素材である理由は、その構造にあります。
ダウンは、中心から放射状に細い繊維が伸びた球状の構造をしています。この繊維が空気を抱え込むことで暖かさが生まれます。そして、この構造そのものは、使用によって化学的に変質するわけではありません。
使用中に起こるのは、主に次の2つです。
- 汚れの付着:寝汗、皮脂、ホコリが羽毛に付着し、繊維が束になって膨らみが落ちる
- 物理的な破損:圧縮や叩きによって繊維が折れる
このうち1は洗浄で解決します。2は元に戻りませんが、破損した羽毛は選別の段階で取り除かれます。
つまり、「汚れて膨らまなくなった羽毛」は、洗えば膨らむようになるということです。化学繊維がへたったら廃棄するしかないのとは、根本的に異なります。
リサイクルダウンの製造工程
- 回収:使用済みの羽毛製品を集める
- 解体:側生地を解き、羽毛を取り出す
- 除塵:ホコリや砕けた羽毛の破片を風力で除去する
- 洗浄:水と設備を使って油脂と汚れを落とす
- 乾燥:低温で時間をかけて乾かす
- 選別:ダウン率・ダウンパワーを測定し、品質ごとに仕分ける
- 検査:第三者機関による性能評価
この工程のうち、品質を決定的に左右するのが洗浄と選別です。
洗浄が品質を決める
洗浄が不十分だと、汚れが残り、においが出て、膨らみも戻りません。リサイクルダウンの品質差は、ほぼここに集約されます。
表参道布団店では、山梨県白州の地下天然水を使い、洗剤を使わずにJIS規格の2倍まで洗浄しています。水そのものの質にこだわるのは、すすぎ残しが最終的なにおいと清潔さを決めるためです。
選別で上限が決まる
回収された羽毛の品質は一様ではありません。もともとダックだったもの、グースだったもの、破損が進んでいるもの、まだ十分な性能を持つもの。これらをどこまで厳しく選別するかで、最終的な品質が決まります。
表参道布団店では、国内に現存する高品質なリサイクルダウンを独自に収集し、そのなかからダウン率93%以上・ダウンパワー400㎤/g以上のもののみを選定しています。
新品の羽毛との違い
| 項目 | 新品羽毛 | リサイクルダウン(適切に処理されたもの) |
|---|---|---|
| ダウンパワー | 300〜450㎤/g | 選別により400㎤/g前後も可能 |
| ダウン率 | 50〜95% | 選別により93〜94%も可能 |
| 清潔さ | 洗浄基準による | 洗浄基準による(新品と同じ論点) |
| においの出にくさ | 洗浄基準による | 同上 |
| 原料の安定供給 | 安定 | 回収量に依存する |
| 価格 | 高い | 抑えられる |
| 産地の特定 | 可能 | 困難(混合されるため) |
機能では差がつかない
表参道布団店のClean Cycle Sleep Down 冬用本掛けは、国内第三者機関の測定でダウンパワー400㎤/g・ダウン率94%という結果を得ています。これは同店の新品ホワイトグース(ダウンパワー400㎤/g・ダウン率93%)と同等の数値です。
「リサイクルだから性能が落ちる」のではなく、「選別と洗浄の水準次第」というのが正確な理解です。
差がつくのは産地の特定
新品羽毛であれば「ポーランド産ホワイトグース」といった産地と種類の特定ができます。リサイクルダウンは複数の出所の羽毛が混ざるため、これができません。
産地にこだわりたい方は新品を、機能と価格のバランスを重視する方はリサイクルダウンを、という選び方になります。
リサイクルダウンを選ぶときの基準
リサイクルダウンは品質の幅が非常に広い素材です。次の項目を確認してください。
1|ダウンパワーとダウン率が公開されているか
もっとも重要です。数値を公開していない製品は、選別の水準が不明です。冬用として使うなら、ダウンパワー350㎤/g以上、ダウン率90%以上を目安にしてください。
2|第三者機関の測定結果か
自社申告ではなく、外部の検査機関が測定した数値かどうか。リサイクルダウンは原料のばらつきが大きいため、実測値の開示は特に重要です。
3|洗浄についての説明があるか
どこで、どのような基準で洗っているかを説明しているか。リサイクルダウンにおいて洗浄は品質の中核であり、ここに言及がない製品は避けたほうが安全です。
4|においの対策
リサイクルダウンで最も懸念されるのがにおいです。洗浄が十分であれば問題ありませんが、不安がある場合は返品条件を確認しておいてください。
においの原因と対処は羽毛布団の臭いの原因と消し方【専門店が解説】で解説しています。
他の「再生素材」との違い
近年、寝具やアパレルで再生素材を使う動きが広がっています。ただし、素材によって「再生」の意味は大きく異なります。
| 素材 | 再生の方法 | 性能の変化 |
|---|---|---|
| リサイクルダウン | 洗浄・選別のみ。素材そのものは変えない | 選別次第で新品と同等 |
| リサイクルポリエステル | ペットボトル等を溶かして再紡糸 | 新品とほぼ同等 |
| 反毛(再生綿) | 古繊維を機械でほぐして再利用 | 繊維が短くなり、強度は落ちる |
| リサイクルウール | 古着を裁断してほぐし、再紡糸 | 繊維長が短くなり、風合いが変わる |
羽毛が特異なのは、再生に化学的・機械的な加工を必要としない点です。溶かすことも、裁断することも、紡ぎ直すこともありません。洗って選ぶだけで、元の構造がそのまま使えます。
これは、羽毛が「繊維」ではなく「立体的な構造体」であることによります。ダウンボールという球状の形そのものが機能なので、形が壊れていなければ性能は残っています。
リサイクルダウンの品質のばらつき
リサイクルダウンは、原料が回収品である以上、品質が一定ではありません。ここが新品羽毛ともっとも違う点です。
ばらつきが生まれる理由
- 元の製品の品質が違う:高級グース布団も、安価なダック布団も、同じ回収の流れに入ります
- 使用年数が違う:5年使われたものと30年使われたものでは、破損の度合いが違います
- 使われ方が違う:圧縮保管されていたもの、叩かれ続けたものは、繊維が折れています
だから選別が決定的に重要になる
回収したものをそのまま使えば、品質は「平均」になります。厳しく選別すれば、上位だけを取り出せます。
表参道布団店では、国内に現存する高品質なリサイクルダウンを独自に収集し、そのなかからダウン率93%以上・ダウンパワー400㎤/g以上のもののみを選定しています。選別に手間をかけるぶんコストは上がりますが、新品と同等の数値を確保できます。
選別の水準を見分ける
消費者から選別の工程は見えません。判断材料は数値の開示だけです。
- ダウンパワーとダウン率が具体的な数値で示されているか
- それが第三者機関の測定結果か、自社申告か
- 洗浄の方法と基準が説明されているか
「リサイクルダウン使用」とだけ書かれ、数値がない製品は、選別の水準が不明です。この場合、価格相応と考えるのが妥当でしょう。
サステナビリティという観点
羽毛はもともと副産物
羽毛は食肉加工の過程で得られる副産物です。捨てられるはずだった素材を利用しているという点で、もともと資源効率の高い素材だといえます。
再生によって循環する
さらに、使い終わった羽毛が再び布団になることで、資源が循環します。新たに水鳥を育てる必要も、廃棄物を出す必要もありません。
羽毛布団は、粗大ごみとして処分するとかさばり、焼却にもエネルギーを要します。再生に回すことは、処分の負担そのものを減らすことでもあります。
打ち直しという形の再生
いま使っている羽毛布団を打ち直す(リフォームする)ことも、同じ循環の一部です。自分の布団の羽毛を洗浄し、不足分を補って仕立て直します。
表参道布団店の布団打ち直し/Clean Cycle Reformでは、洗浄に伴って不足したダウンを、自社のClean Cycle Downで補っています。
表参道布団店のリサイクルダウン
Clean Cycle Down
日本国内で流通するリサイクルダウンから、特に品質・性能が優れたグースダウンを選別したものです。
- ダウン率93%以上・ダウンパワー400㎤/g以上のみを選定
- 山梨県白州の地下天然水で、洗剤不使用・JIS規格の2倍まで洗浄
- 国内第三者機関による測定でダウンパワー400㎤/g、ダウン率94%
- 富士吉田の縫製職人が国内で一枚ずつ仕立てる
商品は冬用本掛け、春秋用合い掛け、夏用肌掛け、枕を展開しています。
詳しい思想はClean Cycle Down 〜新品羽毛を超える美しさ〜をご覧ください。
Flower Down
イタリア産のリサイクルダウンと、カポックの木の実から採れた繊維をブレンドした素材です。カポックの繊維は空気を含んで熱を逃がしにくく、「木に実るダウン」とも呼ばれます。
- イタリア産リサイクルダウン約75%、カポック約25%
- ダウンパワー360㎤/g(720フィルパワー相当)
- イタリアのミナルディ社より国内で初めて直輸入
詳細はイタリアで生まれたフラワーダウンとは?をご覧ください。商品は冬用本掛けなどを展開しています。
よくある質問
リサイクルダウンは衛生的ですか?
洗浄の水準によります。適切に洗浄されたリサイクルダウンは、新品と同等に清潔です。むしろ、洗浄が不十分な新品羽毛のほうが、においや汚れの問題が出ることがあります。数値と洗浄方法が公開されている製品を選んでください。
リサイクルダウンは新品より暖かくないのですか?
選別の水準次第です。ダウンパワー400㎤/gのリサイクルダウンと、ダウンパワー400㎤/gの新品羽毛では、暖かさは同等です。数値で比較してください。
においはしませんか?
洗浄が十分であれば、においはほとんどありません。においが出る場合は、洗浄不足か、乾燥不足が原因です。これは新品羽毛でも同じ論点です。
リサイクルダウンは安いのですか?
原料コストが抑えられるぶん、同等の性能で価格を下げられます。ただし、洗浄と選別に手間をかけるほどコストは上がるため、極端に安いものは選別が甘い可能性があります。
寿命は新品より短いですか?
選別で破損した羽毛を除いてあれば、大きな差はありません。適切に手入れすれば10年以上使えます。また、リサイクルダウンの布団も、さらに打ち直して使い続けられます。
RDS認証はありますか?
RDS認証は新品羽毛のサプライチェーンを対象とした制度です。リサイクルダウンは、そもそも新たな採取を伴わない素材であるため、別の考え方が適用されます。RDS認証についてはRDSダウン 環境負荷の少ない羽毛調達へをご覧ください。
リサイクルダウンの布団も打ち直しできますか?
できます。リサイクルダウンも羽毛である以上、洗浄すれば膨らみが戻ります。一度再生した羽毛を、さらに再生して使い続けられるということです。適切に扱えば、同じ羽毛が何十年も循環します。
まとめ
- リサイクルダウンとは、使用済みの羽毛を洗浄・選別して再び使えるようにしたもの
- 羽毛が劣化する主因は汚れであり、洗浄で解決できる。だから再生が成立する
- 適切に選別・洗浄されたものは、新品羽毛と機能的な差がほとんどない
- 品質を左右するのは洗浄と選別。数値が公開されているかを確認する
- 新品との違いが出るのは、産地や種類の特定ができない点
- 羽毛はもともと副産物であり、さらに循環できる。打ち直しも同じ考え方の延長にある




